市役所に採用されたら教育委員会に配属された話【元「中の人」が公務員志望者に経験談を語る】

こんにちは、消しゴム的存在です。

もともと地方公務員を5年ほどやっていたんですが、先日、公務員志望者の方に向けてこんな記事を書きました。

結論として、自己成長のモチベーションにつながりにくいので、役所の中の人になるのはあまりおすすめしませんよというのが僕の見解でした。

ただ、そうは言っても一定の人気はある職種ですし、実際の経験談を知りたい方もいるかと思います。

この記事では、就活生や転職を考えている方の参考になるように、僕の経験談を書いていきます。

とくに、教育委員会に在籍していた経験談がメインですので、入庁後の配属先として興味がある方は、ぜひ読んでみてください。

目次

激務系職場の3部門

「役所の人って暇なんでしょ?」って思われがちですが、ハッキリ言って運ゲーです。

運悪くブラックな課に配属される場合もあれば、普通に定時で帰れる課に当たることもあります。

とはいえ、入庁していきなり激務のセクションに配属される確率はそんなに高くありません。

なので、高速で仕事を終わらせて帰宅し、生活基盤を維持しつつ、さっさとスキルアップの勉強をするという道もないことはありません。

ただ、不運にも入庁していきなり残業が多かったり、メンタルに負担がかかる職場に配属される可能性もそれなりにあります。

同期を見渡すと一定数ハズレくじを引く人もいると思います。

(心身の調子を崩してしまったり、中には自ら命を絶ってしまう人もいます。悲しいことに、僕の同期でも若くして亡くなった方がいます。)

もちろん、どの部署でも繁忙期はあるんですが、一年中、夜中まで電灯がついている激務系職場をまとめるとこんな感じです。

忙しい職場の系統まとめ
  • 管理・中枢系:財政課、政策課、人事課など
  • 保健・福祉系:介護保険課、障害福祉課など
  • 教育・児童系:児童保育課、学校教育課など

首長の政策によっては、観光系が忙しかったり、商業振興の残業が多かったり・・・といったように、自治体によって差はあると思いますが、上記の3部門は共通して残業が多い気がします。

理由はいろいろあると思いますが、ざっくり言うと以下の要因かと思います。

【管理・中枢系】部門

まず前提として、どの自治体も基本的にお金が足りていません

なので、管理・中枢部門は、「住民のためにこんな事業をするから予算くれ!」という各分野の部署に対して、「お金ないから3分の2の予算でなんとかやって」などと言わなければならない立場になります。

また、職員数も一昔前と比べると、行財政改革の観点から、人員を削減している自治体がほとんどです。

普通に考えると、まちづくりの大きな舵取りに関わる重要なセクションなので、能力や経験のある職員を集めて、それなりに手厚い人員配置が必要だと思いませんか?

しかし、人件費についても厳しい予算配分をする立場になるので、各部門への手前、自分たちばかり人手を多くするということはしづらくなります

どこの部署でも大なり小なり「人が足りない!」という状況は同じなのです。

なので、こうした管理部門は業務の量や重要性に対して、人手が手薄な傾向があります。

たとえば、財政課の場合、僕がいた人口30万人くらいの自治体だと、1000億円を超える予算を扱うこととなります。

しかし、管理職込みでも10人程度の人数で、これだけ大きな予算をもとに、膨大な数の事業査定をしているのです。

少数精鋭といえば聞こえはいいですが、物理的に無理が生じるのは明らかでして、慢性的に時間外労働をせざるを得ない状況になっていることが多いです。

この本は、元福岡市の財政課長が、自治体財政のリアルな内側を語っていまして、興味がある方は一読をおすすめしたいですね。

【保健・福祉系】部門

次の激務系職場は保健・福祉系です。

これは、先日の記事にも書いたんですが、役所の仕事も、全体的に昔より増えているし複雑になってきています。

インターネットなどの普及によって、かつては社会的に認知されていなかった問題などが徐々に表面化してきた結果、昔は見えていなかった課題を解決するために、昔より法律や制度が増えたり複雑になってきています。

この影響を一番受けるのが保険・福祉部門だと感じています。

介護保険や障害福祉、高齢者福祉などに関わる部署は、まさに社会的に弱い立場に置かれた人たちに手を差し伸べることが仕事なわけですから、ニーズは高まる一方なわけです。

国などの制度改正も多く、より細かく正確な知識が求められますし、実務上も業務が多い職場ですね。[/box]

【教育・児童系】部門

平たく言うとこどもに関する部門なんですが、「どの自治体でも忙しい部署」というイメージがあります。

おもに、保育所や幼稚園、小中学校の管理運営や制度運用に関わる仕事をしています。

僕は教育委員会に配属されまして、小中学校に関わる仕事をしていました。

内側についてはあとで書きますが、この部門は、単純に手数が必要な仕事が多い職場ですね。

この部門はほかのセクションと比べて少し特殊な位置にあると思っていまして、組織のなかで「中間管理職」的なポジションになるんですよね。

ひとつ目で紹介した管理系職場から管理される一方で、自分たちも保育所なり学校なりを管理する立場になるのです。

保育所や学校にもそれぞれ所長や校長のもとで組織があるわけなので、挟まれたようなかたちになるんですね。

保育所や学校からは「子どもたちのためにもっと予算を割いてくれ!」という要望が常に上げられる一方で、財政当局に新しい予算要求を行なってもなかなか措置されることはありません。

財政当局としても、自治体に入ってくる予算に上限があるなかで、各事業の優先順位を慎重に判断しないとならないため、安易に新たに予算を計上することも簡単ではないのです。

なので、余程しっかりとした必要性・緊急性を理論立てて説明できないと、学校などからの要望に応えることも難しくなります。

こうした「中間管理職」的な特性から、忙しくなりがちな職場だと言えます。

ちなみに、大体どの市役所でもあると思うんですが、周辺市町村の自治体職員が集まる研修会が定期的にあるんですよね。

他自治体の教育委員会にいる職員の人に聞いたことがあるんですが、慢性的な残業職場だと言っていました。

教育委員会に配属された経験談

さて、前置きがめちゃくちゃ長くなってしまいましたが、私は、この3部門のひとつである教育委員会に3年ほど在籍していました。

教育委員会って何なの?という制度的な話については、ウィキペディアなどでざっくり押さえておいて、入庁してから書籍などを読んでみるといいかもしれませんね。

教育委員会は市長から独立している組織でして、入庁と同時に出向するという一見すると不思議なことが起こります。笑

辞令も2枚もらいました。

教育長という人が教育委員会のトップなわけですが、彼を選挙で選んじゃうと、特定の政治勢力に偏る可能性があるよねということで、こういうことを防ぎましょうということで、独立した行政委員会という位置づけになったようです。

「教育は中立であるべし」という理念ですね。

さて、教育委員会というと、ドラマなどで「学校をいじめる意地悪なおっさんやおばさん」みたいなイメージがあるかもしれません。

大体、ドラマに出てくるのは、学校を視察に来た「教育委員」でして、大学教授とかお医者さん、元校長先生など、いわゆる「有識者」と呼ばれるような人たちが就くことが多いです。

実際は、僕が会ったことのある教育委員に限っていえばですが、皆さん優しかったですよ。

ただ、彼らの仕事は、基本的に「意思決定」なので、事務的な仕事をすることはありません。

消しゴムくん

市の教育に関する重要な案件について、話し合ったり決めたりします。

じゃあ誰が事務仕事をするのかと言ったときに、僕みたいな一般の職員の出番というわけです。

教育委員会には「事務局」がありまして、そこで「裏方の事務仕事」を行なっています。

あ、ちなみに、僕は教育に関する専門知識はまったくありません

教職免許も持っていないし、教育学の授業も受けたことがありません。

そんな人でも普通に教育委員会に配属されますし、上司・同僚・後輩はほとんどそんな人です。

教育の勉強をしてきた職員ばかりが入庁するわけではないのでやむを得ないとは思うんですが、その自治体の「教育基本計画」といった重要計画の策定に携わることもあるので、結構危なくね?と思うこともありますね。

消しゴムくん

ちなみに、いじめの相談や教育の内容に関わるような仕事は、「指導主事」という人たちが担当します。元々現場の先生方が市教委に出向してきている教育のプロですね。もともと教職員は都道府県の教育委員会で採用しているので、市の教育委員会へは「出向」という扱いになります。

では、教育委員会の一般職員がどんなことをやっているかというと、学校施設や学校制度を維持するような仕事ですね。

直接的に教育の中身にかかわるようなことは、基本的にやりません。というかできません。

具体的には、大きい事業だと、学校を建てたり統合したりといったものもありますし、小さいものだと、小中学校の光熱水費を支払ったり、ガラスが割れたら修繕したり、児童用のパソコンをリースしたり、入学通知書を送ったり、教職員の健康診断の手配をしたり・・・。

といったように、細かく挙げていくとキリがないのですが、「子どもたちが教育を受けるために、当たり前に整っていないといけない環境を整える」というのが大きな仕事です。

あと、仕事柄、教職員の不祥事とか、学校で起きた事故など、結構デリケートな案件が耳に入ることも結構ありましたね。

まとめ

ちょっと忘れているエピソードなどもありそうなので、思い出したときに追記していきたいと思っています。

役所のなかにいると、「もっと教育にお金をかければいいのに」と思うことが多々ありました。

人口が減って税収も減るのが間違いない状況にあって、子どもたちにより良い教育環境を残すにはどうしたらいいのか。

いろいろな大人がもっと積極的に関わっていくべき問題かもしれませんね。

消しゴムくん

最後まで読んでいただきありがとうございました!